こちらの記事で出版企画書について述べましたが、より具体的に書き方について解説します。
なお、本記事の最後に私が使用した過去の出版企画書の実例サンプル(PDFファイル)と、そのまま利用できる出版企画書のテンプレート(Wordファイル)を添付しておきますので、必要に応じてお使いください。
なぜ出版企画書が必要なのか
出版社(編集者)は常に企画を求めています。だからといって、何でもいいわけではありません。
出版社は慈善事業ではなく、営利目的の企業です。売れないとわかっている本を出す時間も資金もありません(それでも自分の企画をそのまま書籍にしたいという場合に自費出版があります)。
言い換えると、「出版したら自社に大きな利益をもたらす、あるいは利益は社会的に価値が高いと思われる企画」を求めています。
出版を題材にしたマンガなどで、いきなり本編をすべて書ききった数百ページの原稿を提出するという場面がありますが、実際の編集者は実績がなく、ファンも少ない人の文章を長い時間かけて読んでくれるほど暇ではありません。
そしてたった一人の判断で出版が決まるわけでもありません。社内ルールに沿って、出版してOKかどうかの判断をしています。その判断に使うための資料として出版企画書が必要になります。
企画書が吟味される過程は多くの場合が以下の流れになっています。
1. 担当編集者の判断
一人の編集者が企画書を確認します。基本的に最初に企画を確認する編集者は応募企画を担当する見ず知らずの人になりますが、以前の記事で書いたように自分のコネクションを駆使して知り合いに編集者がいた場合、その人に直接依頼するのもOKです。
実はこの第一段階を通過することが最も難しい事が多いので、編集者が企画内容に乗ってくると出版の可能性が一気に高まります。だからこそ見ず知らずの編集者よりも、親しい編集者にお願いした方が一緒になって考えてくれることもあります。
2. 編集会議(営業会議)
出版社によって微妙にルートは異なるのですが、編集者がその企画書を練り直し、出版社独自の仕様に書き換えた上で編集会議に提出します。編集会議を通過しなかった場合は、再度企画を練り直してチャレンジし直します。
編集会議を通過したのち、出版社によっては営業会議が必要な場合があります。いくら編集者がGOサインを出しても、営業部が売れるという判断をしなければ企画は成立しません。
3. 役員決裁
営業会議が通過したら、役員の決裁を経て(ここは会社の手続き的な要素が強い)、晴れて出版が決定するわけです。
出版企画書に必要な項目
では具体的に出版企画書に必要な項目について解説していきます。
実は出版企画書に載せる情報はある程度決まっています。その決まっている項目の中で、いかに魅力的に見せるかが腕の見せどころになるわけです。
タイトル
書籍のタイトルは最終的には出版社が決定することがほとんどです。私もいままで44作の商業出版に関わっていますが、自分の要望がそのまま通ったのは1割もありません。
だからといって企画書に載せるタイトルは適当でいいと思ってはいけません。企画書作成時点で最善だと思われるタイトルを載せておきましょう。コツとしては本文の内容を簡潔に表していて、かつインパクトのあるフレーズを2~3個掲載しておくと良いでしょう。
サブタイトル(キャッチコピー)
サブタイトルはタイトルで載せられなかった補足説明を載せましょう。
例えば私が関わった書籍を事例に挙げると
- <タイトル>副業力 <サブタイトル>いつでも、どこでも、ローリスクでできる「新しいマネタイズ」
- <タイトル>ブログ飯 <サブタイトル>個性を収入に変える生き方
- <タイトル>鬼フィードバック <サブタイトル>デザインのチカラは“ダメ出し”で育つ
- <タイトル>クリエイターのための権利の本 <サブタイトル>著作権トラブル解決のバイブル!
になります。
タイトルをシンプルにしすぎると覚えやすくはあるのですが、内容が伝わりづらくなってしまうので、サブタイトルで補足していく形になります。
本書の内容・目次案
企画の内容を簡潔に説明します。その際に目次も添付しておくと編集者もイメージがしやすいので、作成することをお勧めします。
目次は企画通過後や執筆中に追加・削除・変更することもよくありますが、80%ぐらいは確定しておきましょう。私の場合は最初に100項目ぐらい出しておき(多ければ多いほど後で楽になります)、その項目を5~8章程度に分類する形を取っています。項目は作ってみたものの、実際に執筆し始めると書けなかったり、他の項目と重複する内容もあるので、その項目は削除します。
逆に執筆が進んでいくと足りない要素も見えてくるので、そんな時は新しい項目を追加します。
あくまでも目安ですが、1項目1,000~1,500字で原稿を仕上げていくと、10万字を超える文章量になります。一般的なビジネス書は10万字前後で構成されていることが多いので、最初に目次を作っておくことで、企画通過後に原稿を書くことに集中できます。
ジャンル(ビジネス書、技術書、実用書など)
現時点で想定している書籍のジャンルを記載します。イメージが沸かなければ大型書店に行ってみると、棚ごとにジャンルが載っていますので、イメージに近いものを選択すると良いでしょう。
著者名・プロフィール
あなたの名前(ペンネーム)や経歴、ブログやSNS等の実績・フォロワー数などを記載します。
読者が信頼してくれるような内容も大切ですが、編集会議・営業会議で出版社の人たちが「この著者の作品は売れそう」と感じさせることも重要です。
参考までに私が載せるとしたら以下のようなプロフィールになります。
12年間の会社員時代からさまざまな副業に取り組み、2009年にインターネット集客や収益化の専門家として独立。
会社員時代は人事採用・人材開発・人事管理などの管理部門7年、営業・企業投資などの営業部門5年に従事しており、特に採用部門では新卒・経験者採用合わせて20,000人以上の面接を務めた経験を持つ。
独立後はブログメディアの運営とともに、コミュニティ(オンラインサロン)運営、書籍の執筆・プロデュース、YouTube活用サポート、企業や地方自治体のIT(集客・PR)アドバイザー、講演活動など、複数の業務に取り組むパラレルワーカー。
現在は複業(副業・兼業)の重要性を伝えるため、新聞や雑誌、ウェブメディアの連載や取材の傍ら、テレビやラジオなどのマスメディアへの働きかけをおこなっている。
著書・監修書に『副業力』『Google AdSense マネタイズの教科書』『ムリなくできる親の介護』(日本実業出版社)、『ブログ飯 個性を収入に変える生き方』(インプレス)、『アフィリエイトの教科書』『ブログの教科書』(ソーテック社)、『成功するネットショップ集客と運営の教科書』(SBクリエイティブ)、『クリエイターのための権利の本』(ボーンデジタル)、『複業のトリセツ』(DMM PUBLISHING)など43作(2021年9月現在)。
企画意図(時代背景)
「なぜ」、「今」、この書籍を企画したのか。この本を読むことで読者は何が解決できるのか、役に立つのか。
そして現在の(業界の)社会的背景がどのような状態で、結果としてこの企画が世間に認められる理由を説明します。
想定読者層
この書籍を購入する読者の層を説明します。
性別や年齢層、社会的ポジション(会社員や経営者、あるいは主婦、シニア層など)を明確化することで、販売数の見込みを立てることが可能になります。
また、層によって使っている言葉の質が変わりますので(参考:読み手に伝わる文章を意識する)、書籍内での適切な言葉選びの基準にもなります。
類書
あなたの企画と同じジャンルの書籍をいくつか紹介しましょう。編集者に「売れているジャンル」だということを伝える意図もありますので、有名な書籍を一冊、そこそこ売れている(と思われる)書籍を一冊づつ紹介できるといいでしょう。
売れているジャンルの後追いは得意ですが、新ジャンルにチャレンジすることが苦手な出版社も多いので、もし新しいテーマを取り扱う場合は、トレンドに強い出版社を選んだ方が良いでしょう。
類書との差別化
紹介した書籍の内容そのままでは、新刊として発売する意味がありません。あなたの独自性をここで説明する必要があります。
販売施策
この項目は必須ではないのですが、私は入れています。
出版社の人間が自分の書きたい書籍の業界に詳しいとは限りません。こちらで資料を用意しておくことで、編集会議内で後押しになります。あるジャンル内での著名人である、SNSのフォロワー数が多い、ブログの購読者が多いなど、書籍販売のプロモーションに使える実績があればしっかり載せておきましょう。
出版企画書のサンプルとテンプレート
長々と解説してきましたが、実例を添付します。私の単著デビューであるブログ飯という書籍のときに、出版社の担当に提出した企画書です。この企画書、2回提出しているので修正前と修正後を両方添付しておきます。
こちらが出版企画書のテンプレートです。基本的なことしか載せていませんが、ご自由にお使いください。
投稿者プロフィール
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ブログメディアの運営とともに、コミュニティ(オンラインサロン)運営、書籍の執筆・プロデュース、YouTube活用サポート、企業や地方自治体のIT(集客・PR)アドバイザー、講演活動など、複数の業務に取り組むパラレルワーカー。
現在は複業(副業・兼業)の重要性を伝えるため、新聞や雑誌、ウェブメディアの連載や取材の傍ら、テレビやラジオなどのマスメディアへの働きかけをおこなっている。
著書・監修書に『副業力』(日本実業出版社)、『ブログ飯 個性を収入に変える生き方』(インプレス)、『ブログの教科書』(ソーテック社)、『成功するネットショップ集客と運営の教科書』(SBクリエイティブ)、『クリエイターのための権利の本』(ボーンデジタル)、『複業のトリセツ』(DMM PUBLISHING)など45作(2022年5月現在)。
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