自分の書いた本が書店に並び、多くの方のもとに届く。

著者として本を出版することに憧れを抱いているものの、どうすれば出版できるのか分からない方も多いかと思います。

著者は雲の上の人に感じるかもしれませんが、どのような著者も最初は無名の新人でした。何も分からない状態から、出版を実現したのです。

出版の方法を知るなら、著者の方や出版業界の方に話を聞くのが一番です。とはいえ、出版関係の方と知り合う機会はなかなかありませんよね。

そこで今回は、出版社「逆旅出版」を経営する中馬さりのさんにインタビュー。リアルな出版事情についてもお話しいただいているため、出版に興味がある方はぜひご一読ください!

逆旅出版とはどんな会社?

中馬さん:逆旅出版は、2022年4月にできたばかりの出版社です。それ以前は編集プロダクションの形で、toB向けのWebメディアの運営代行や他社様の情報誌の制作をしていました。法人成りを機に書籍の制作・刊行・販売を追加し開始しています。

この1年半くらいで、ほぼ出版がメインになりました。比率で言うと、7:3くらいの割合ですね。

中馬さん:立ち上げてからの1年半で、以下の4冊を刊行しました。

  1. 『CAMPFIRE解体新書 クラウドファンディングであなたの小さな「やってみたい」が加速する。』(大堀悟 著)
  2. 『埋まらないよ、そんな男じゃ。 モノクロな世界は「誰かのための人生」を終わらせることで動きだす。』(yuzuka 著)
  3. 『君と出会って僕は父になる』(矢野拓実 著)
  4. 『No.2じゃダメですか? 支える個性の活かし方』(佐藤彰悟 著)

ジャンルは異なりますが、どの本も気付きや価値観の変化を与えられるように作っています!

中馬さん:例えば『CAMPFIRE解体新書』は、クラウドファンディングを使った資金調達に関する書籍ですが、世の中にはやりたいことがあってもお金を理由に諦めざるを得ない方もいらっしゃいます。

そこでクラウドファンディングをひとつの手段として提案できれば、お金に関する価値観の変化や気付きを得てもらえるのではないかなと思っています。

他の書籍もジャンルは違っても、読者の方が何かしらの気付きや価値観の変化を得られる本達です。

幼少期の原体験が会社のコンセプトに

中馬さん:「逆旅」は、宿を意味する故事成語なんです。旅人にとっての「宿」って、旅の目的になることもあれば、行き先を決めたりこれからを振り返ったり分岐点にもなる場所だと思います。逆旅出版では人生という長い旅の中にある、休憩場所や分岐点になる宿のような本を作っていきたいという思いを込めました。

中馬さん:そうですね!唯一無二の体験をさせてくれたり、知らない価値観に触れられたりすると言う面で、本と宿は似ているところがあると思います。逆旅出版は、そんな宿のような本を作っていきたいです。

中馬さん:自分自身が本を通して、さまざまな影響を受けたり価値観を広げられたりしたと思っているからですね。

私は小さい頃から本が好きで、それこそ通学中や食事中も読むくらいでした。人生におけるさまざまなことは、本の著者達が教えてくれたと思うくらい読んでいたんです。

中馬さん:著者として書きたい内容もあります。ただ、著者ですと、自分が関われる本の数がどうしても限定されるなぁという気持ちもあります。

中馬さん:1冊の本を作るのにはある程度の時間がかかります。どれだけ急いでも3ヶ月、長ければ何年もかけて1冊の本を作ります。

その間、著者の場合は1~3冊ぐらいの関わりになるかと思いますが、編集者ならもっと多くの本に関われますし、出版社を経営するという視点ならたくさんの方の手を借りて何冊も関わることができますよね。

中馬さん:将来的には私も本を出したいですが、今は逆旅出版として体制を構築することを優先しています。

中馬さん:そうですね!魅力的な著者さんが多いので、ワクワク度という面でも出版社に力を入れていきたいです。

逆旅出版立ち上げの経緯

中馬さん:弊社1冊目の書籍である『CAMPFIRE解体新書』の刊行がきっかけです。私がもともと旅行雑誌の編集やライター講師をしていたため、著者から「書籍を作りたいので編集をお願いしたい」と声をかけてもらい、フリーランスとして受諾しました。

その時点では出版業を行うことは考えていなかったのですが……『CAMPFIRE解体新書』を作っているうちに段々愛着が湧いてきたんです。

中馬さん:編集して終わりにするのではなく、書籍の5年後・10年後・100年後にも関わっていきたいという気持ちになりました。

既存事業に出版を追加して『CAMPFIRE解体新書』を弊社から刊行してもらえれば、出した先にも関わっていけますし、重版するかどうかや表紙を変えるなどの決定権も得られます。

そのほうが絶対に楽しいと思ったので、腹を括って出版社を立ち上げました!

逆旅出版を立ち上げる上で大変だったこと、良かったこと

中馬さん:出版に関する知識も業界での信頼も足りない状況だったため、出版社としての経営体制を整えることが大変でした。

ざっくりと「本の作り方」はわかったとしても、利益をだすにはどうするのか、在庫の管理はどうするのか、重版の判断はどんな計算でだすのか……。決断のための知識が全く足りず、先輩の出版社経営者さんや編集さんに助けていただきました。

また、出版業界は印刷会社さん、「取次」と呼ばれる出版社と書店さんの間に入ってくれる会社さん、書店さんなど多くの方が関わっています。

その方々にとって、立ち上げたばかりの弊社を信頼して、わざわざ取引を開始するメリットってあまりないですよね(笑)。ビジネスとして、歴史や実績のある相手の方が安心できます。

そこを何とか弊社と取引を始めてもらって仲間に入れていただいたのですが、本当に有難いなぁと今でも思っています。

そういった書籍作りに集中できる体制を整える苦労はありましたね。ただ、大変なこと以上に良かったことの方が多かったと感じます。

中馬さん:名実ともに「本が好きな人」でいられることが嬉しいですね。本が好きという気持ちから人生を読書や書籍関連の時間で埋めたいと思って、フリーライターになり、法人成りして今があるので。今は友人からも「逆旅出版の本を書店で見つけたよ!」と言ってもらえるし、出版社や書店の方々とお話させてもらえる機会も多いですし、色々な方が本作りや書籍についての話題をふってくれるのが嬉しいです。

また、わざわざ感想を伝えてくださる読者さんもいらっしゃいます!著者さんに共有していただいたり、私自身に届いたり、リアルな声を聞くと達成感や喜びがあります。

中馬さん:そもそも本を家に置いてもらえること自体が、嬉しいことだと思うんです。場所をとらない消耗品でもなく、家電のように本自体が役立つわけでもありません。そんなスペースを取るものなのにもかかわらず、置いても良いと思ってもらえたこと自体が嬉しいです。

逆旅出版における通る出版企画の特徴

中馬さん:逆旅出版としての良い本は、会社のビジョンでもある「人生という長い旅の中で休憩場所や分岐点になる宿のような本」という大きな基準があるのですが、それと同じくらい「売れそうか」も重視しています。売れるということはその時代の一定数の人に求められて、心を動かした本だと思うからです。

もちろん売れなくても素敵な本はあるのですが、現実問題として売れずに在庫が残った場合、経営を圧迫して他の書籍を巻き込んでしまう可能性があります。
また先ほどもお話ししたように、出版は多くの方が関わっているなぁと思うんです。もし売れなければ、出版社だけでなく本に関わる全ての方に迷惑をかけることにもなります。

中馬さん:そうなんです。なので出版社である以上、「売れること」は目標のひとつとして持っておきたいですし、企画段階から向き合いたい要素です。

加えて、会社全体で「売れる本」が沢山あれば「今は売れていないけど素敵な本」を守れる可能性が高まるというのもあります。

私は、書籍をその国の文化や歴史を残せる媒体だと考えています。書籍を刊行すると、出版社は国立図書館に納本という業務を行います。毎回、日本の文化をひとつ紡いだと思えて、非常に嬉しい瞬間です。

だからこそ、やっぱり絶版や断裁はしたくないですし、弊社としては「売れること」に貪欲でいきたいですね。

未経験から出版を目指す人がやるべきこと

中馬さん:まずはとにかく発信をしてみてはどうでしょうか?

編集者さんも著者さんを探していて、SNSの発信やブログをきっかけに出版に至る方も多いです。自分の発信が編集者の目に止まれば、出版の可能性が出てきます。

また、出版社によっては持ち込みも有効です。そこから刊行に至った本もたくさんあります。

中馬さん:そもそも人生で出版をする人は、500〜1,000人に1人と言われています。人口の0.1〜0.2%という割合なので、狭き門ではありますよね。

だからこそ出版につながることは、何でもやってみた方が良いと思います!

  1. どこかで目立っている人
  2. 持ち込みをしている人
  3. どこかで目立っていて、持ち込みもしている人

という3人がいたとしたら、やはり「目立っていて持ち込みもしている人」の方が、編集者さんも見つけやすいですから。

中馬さん:そうですね!周囲に意思表示しておくのも大切かなぁと思います。思わぬところから、チャンスにつながるかもしれません。

書籍出版は良くも悪くも「肩書き」がつく

中馬さん:個人的には書籍を出版すると肩書きがつくというか、デジタルタトゥー以上に今後の人生に大きな影響を与えると感じるので、そこは注意した方がいいかもしれません。

例えば弊社の『CAMPFIRE解体新書』を出した著者は、それまでも「クラウドファンディングに詳しい人」ではあったのですが、「書籍を出すほどクラウドファンディングに詳しい人」になりますよね。

クラウドファンディング関連のお仕事の話も増えるでしょうし、2冊目の話がくるとしたら小説や絵本などよりビジネス書の依頼の方がきやすくなります。

良くも悪くも「著者」になるため、勢いで出版してしまうと、その後のキャリアに影響があるのでは……とも思うんです。

中馬さん:万が一、出版後に「絶版にしたい」と思ったとしても、一度全国の書店に並んだ本を回収して絶版にするというのは物理的に不可能です。

ただ出版することを目指すというより、一生まわりに聞かれても辟易しないぐらい好きなものと出会うことや、あなたの本が読みたいと言われるくらいの専門性を身につけることを優先した方が、後悔せずに済むんじゃないかと思います。

中馬さん:私の尊敬する牧村朝子さんという文筆家さんは『「自分の名前が入らなくても世に残したい言葉がある人」が著者に向いている』とおっしゃっていました。

非常に共感しましたし、「今後この分野と決別はしない」と言えるほど語りたいことの方が、楽しく書けて素敵な書籍になるのではないかと思います。

投稿者プロフィール

倉嘉 リュウ
製造業2社を経て、2020年からライターとして活動。現在はアニメコラムやIT・転職関連の記事を中心に執筆しています。

心を動かされる文章を目指し、日々ライティングスキルを追求中。