企画が通って、原稿が書き終わって、製本されて、書店に並ぶことによって、あなたの作品が世間に公開されます。
多くの著者は執筆作業に全力を投じてしまい、エネルギーが尽きてしまいます。書店に配本されれば自分の役割は終わりで、あとは出版社や書店が売ってくれると思いこんでいる著者も居ます。
それは大きな間違いです。誰も売ってくれません。あなたの作品はあなたが売るんです。
内容が良い本であることは大前提なんですが、理想だけ高くて売れていない本は存在していないことと一緒です。売れている本は正義なんです。売れるか売れないかで、あなたに2冊目3冊目の依頼が来るかどうか変わってきます。
発売前はAmazon、発売後は書店
私がおこなう出版プロモーションの手順として、まずはAmazonの予約を増やすことに注力します。
ある程度、原稿の目処が立ってくると、出版社がAmazonに書籍の情報を掲載します。
1. 書籍のタイトルやページ数、発売日などの基本データの掲載
2. 書籍の内容や著者プロフィール、目次などの詳細情報の掲載
3. 表紙画像の掲載
出版社によって違いはありますが、この3つのステップを経て書籍の詳細情報が登録されます。ですから、各ステップにおいて、ブログやSNSで告知をおこなっています。もちろん友人に告知協力をお願いする場合もあります。
Amazonが提供している著者セントラルに登録することで、著者のプロフィールの詳細を載せることができます。こちらもぜひやっておきましょう。
Amazonは発売直後に売り切れになってしまうと、タイミングによって1週間以上在庫が補充されない場合があります。発売直後が一番売れるのに在庫切れというのは完全に機会損失ですので、早めに予約を積み上げておくことに注力します。
書籍自体は発売日の1週間前には見本誌ができあがってきます。その時点で仲の良い発信者などにあらかじめ献本などをしておくと、発売日近辺にブログで書評を書いてくれることもあります。その場合は、あなたのSNSで全力拡散しましょう。そしてAmazonのランキング向上に繋げましょう。
献本については出版社が書籍を提供してくれる場合もありますし、著者割引で2割程度安く購入できる出版社もあります。自分から送る場合は、気持ちを込めた手紙を添えても良いでしょう。
とかいいつつ、一番楽なのは住所を聞いてAmazonから送るパターンです。2割安く買っても、送料で相殺されちゃうんですよね。であればAmazonから送った方が、封筒に住所を書く手間も省けます。自分に合った献本方法を見つけておくと良いでしょう。
なお私の場合、献本は書評なんて期待せず、お世話になった人への感謝の気持ちでお渡ししています。もし、書評を書いていただけるにしても「良いも悪いも含めて好きに書いてください」と言ってます。
Amazonランキング対策として、セミナーなどの特典を付与する形でのAmazonキャンペーンを仕掛ける人もいます。Amazonのランキングを上げて、話題と実績を作ろうという考えだと思いますので完全に否定するつもりはありませんが、私はやりません。理由に関しては別の記事で書きます。
発売日が過ぎたらAmazonはひとまず放置しておいて(ブログやSNSにお任せして)、書店のプロモーションに入っていきます。
書店営業の作法
Amazonでのプロモーションも大切なんですが、Amazonってあくまでも一つの書店なんです。ですから、Amazonにリソースを集中させるのは得策ではありません。
全国には1万店を超える書店があります。1万店すべてに書籍を置いてもらうことは不可能ですが、400店に10冊ずつ置いてもらえばそれだけで4,000部です。書籍を売りたければ既存の書店をないがしろにしてはいけません。
アナログ的に感じるかもしれませんが、全国の書店で面陳列/平積みしてもらう期間をいかに延ばすのかという施策も必要になります。書店に行った時、表紙を向けて並んでいる書籍と、棚に挿ささっていて背表紙だけの書籍のどちらを手に取りますか?
棚に刺さってしまった時点で、書籍を手にとってももらう機会は激減します。お客様の目に留まらせるということは書店で売り上げるためには重要な要素なのです。
平積みするのか、棚に挿すのかを決めるのは書店員さんです。書店員さんとの関係性・信頼関係を築くことで、並べてくれる期間を人為的に延ばすことができるんですよ。
ずっと並べてくれていれば、お客様に手に取ってもらう機会も増えますから、結果としてコンスタントに売れていきます。売れていれば、棚に挿してしまう理由はありませんから、ずっと平積みしてくれるわけです。
私の書いたブログ飯って2013年に出てる本なんですけど、いまだに面陳列してくれている書店は多いです。それは、書店員さんとの信頼関係と、販売実績だと思うんですよね。保証はできないんですけど。
技術書の著者で書店を回る人はほとんどいません。書店員さんから「初めて著者と会いました」って言われることも多いです。足を運んだだけで、他の著者よりも一歩踏み込めるんです。書店回らない理由ってありますか?
「出版社があんまり動いてくれないんですよね」という言葉をときおり耳にします。当然です、出版社の営業人員は限られているんですから。出版社の営業担当は、売れる本を優先するんです。
残念ながら私らは村上春樹さんではありません。新人の、知名度も低い、そして自分で売ろうとしない著者の本は、最低限しか時間を割けません。出版社は本を書店に並べてくれただけで役割は果たしています。それ以上の活動をやってくれたらラッキーだと思いましょう。
だからこそ自分で動いて本を売る活動をする必要があります。自分の活動で売上の初速が上がったら、営業部全体で応援してくれるようになります。
というわけで、私の書店営業ノウハウを隠さず公開します。
やっていることは非常にシンプルで、ポップを作って、それを持って関東圏の書店を回ります。
紀伊國屋書店、丸善・ジュンク堂書店、有隣堂、三省堂、ブックファースト、蔦屋書店といった大型チェーン店は絶対に回ります。秋葉原の書泉ブックタワーや、八重洲ブックセンター、与野の書楽など、地域密着した大型書店も可能な限り訪問します。
私は埼玉在住なので関東圏以外はなかなか足を運べないんですけど、出張や旅行に行った地域に書店がないか調べて、必ず訪問するようにしています。大阪や名古屋で講演したときにも書店回りをおこないました。沖縄旅行の際にはジュンク堂も行ってます。要はやるかやらないかです。
ちなみにポップは妻に描いてもらってるんですが、まぁ、なんというかインパクトはあります。渡す時に書店員さんに失笑されるので心の強さが必要なんですが。
でもこれくらいインパクトあると書店員に覚えてもらえるんですよ。「また来たんですか、今度はどんなのですか?」ってニヤニヤしながら話しかけてくれます。ここまでインパクトなくてもいいですけど、足を運ぶというのが重要で、書店員さんに顔を覚えてもらうのが一番の目的です。
訪問後にSNSに掲載するのにも理由があります。もちろん、友人やフォロアーに書店に置いてあることを告知するという意味もありますが、実は出版社へのアピールでもあります。
私はFacebookで編集者と繋がっていたり、Twitterで出版社と繋がっていたりします。私が書店営業の様子をSNSで流すことで「この著者はここまで動くんだ」ということを暗にアピールしているんです。
そのアピールは該当書籍の編集者や出版社だけにしているわけではありません。私の動きを見ている類書を取り扱う出版社の編集者が、「染谷はうちの本書いてくれたときもこれだけやってくれるんじゃないか」という期待感を持ってもらうことを狙っています。
原稿を書いて、自ら売ってくれる。出版社としては繋がっておいて損はない著者だと思いませんか?
直接的な理由は出版社のみぞ知るですが、結果として数多くのお声がけをいただき、新たな著者も発掘でき、原稿も(多少は遅れても)仕上がるし、増刷もかかるし、みんなが幸せになるという形になっているんじゃないかと勝手に思っています。
先程も書きましたが、大手書店は基本的に全部押さえているんですが、特に紀伊國屋書店と丸善・ジュンク堂書店の訪問には力を入れています。これにも理由があって、丸善・ジュンク堂書店は純粋に店員さんが好きだという個人的な理由です。そして紀伊國屋書店はシステム的な理由です。
紀伊國屋書店はPubLine という、販売情報システムを外部に提供しています。もちろんジュンク堂やブックファーストも販売管理システム自体は持ってるんですけど、紀伊国屋のPubLineは出版社や他の書店も導入していている場合が多いです。
要は紀伊國屋書店の売れ筋商品=日本で売れている書籍だという認識になるんです。
もう一つ、これは技術書だと販売数的に厳しいので私はやっていませんが、王様のブランチなどの情報番組内でブックランキングが公表されるコーナーがあります。この調査店舗から集中的に購入してもらうことで、テレビで書籍が紹介される可能性が生まれるわけです。
ランキング上位の多くがビジネス書や文芸書なので、技術書がそのランキングに入っていくのは大変ですが、知識の一つとして持っておくと良いかと思い、記載しました。
なお、私は仲の良い書店に行った際には、お布施のつもりで一冊買っていきます。書店の販売実績になりますし、買った本は献本用として使うこともできます。
投稿者プロフィール
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ブログメディアの運営とともに、コミュニティ(オンラインサロン)運営、書籍の執筆・プロデュース、YouTube活用サポート、企業や地方自治体のIT(集客・PR)アドバイザー、講演活動など、複数の業務に取り組むパラレルワーカー。
現在は複業(副業・兼業)の重要性を伝えるため、新聞や雑誌、ウェブメディアの連載や取材の傍ら、テレビやラジオなどのマスメディアへの働きかけをおこなっている。
著書・監修書に『副業力』(日本実業出版社)、『ブログ飯 個性を収入に変える生き方』(インプレス)、『ブログの教科書』(ソーテック社)、『成功するネットショップ集客と運営の教科書』(SBクリエイティブ)、『クリエイターのための権利の本』(ボーンデジタル)、『複業のトリセツ』(DMM PUBLISHING)など45作(2022年5月現在)。
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